キャラクターの台詞は脳内保管でよろしくお願いいたします。

シナリオ004 九つ色の魔女の宵明け (2010/12/30発行 幻想鏡現詩 夢現のはじまり掲載より 追記分あり)



幻想郷 魔法の森 元旦 早朝



――――ざっ ざっ かっ  がちゃっ 





 やっと着いた……。うぅ、足が重い。ふらふらするしそれに……。
 
「はぁ……。頭痛い……」

足元がおぼつかない。だけではなくもう何も考えたくない。頭が・・・。

 「だから呑み過ぎだっていっただろ?」

 「……わかってるわよ。言われなくても」
 
上海たち……、神社に置き忘れて来てきちゃった……。

今度取りに、ううっ……

頭の中で小さい鬼が跳ねてるように痛い。


ううっ……。気持ち悪い……。えと……お水……。あ、わっ、足が……。
 何もないところで躓く。


 「おっと!」

 とすっ


 足が縺れて倒れそうになるアリスを抱きとめる。
 
まったく、立てなくなるまで呑むなよな。こういうところは私より意地っ張りなんだから心配してたんだ……。

 「大丈夫かアリス? ちょっと待ってろ、今水持って来てやるからな」


 乱れた金の髪と、虚ろな青い眼をした魔法使いを椅子に座らせてやる。
すぐに机に突っ伏してしまった彼女は『アリス・マーガトロイド』
お酒には弱いわけではないのだが、今日は相手が悪かった。


「う~ん……。うー……」

「……」
お前はどこかの吸血鬼か。まったくしかたないやつだな……。だから言ったのに。




 「まずは暗いし、っと」


 ぱちんっ  ぱぁあ・・・



指を鳴らしながら台所に歩く。
何度もアリスの家には来てる。慣れたものだ。指を鳴らす度に星のかけらが瞬き、人形屋敷に明かりが灯る。 


ん?ああそうだ、これは魔法。

アリスの家にあるインテリアたちはほとんどのものが魔界から持ってきたものだったり、
アリスが自分で作ったものだ。前にも言っただろ?『魔道具』の一種だ。

今やってたこれ、ゆびぱっちん。ほれほれ、簡単だろ?

何でこれをしてたのかっていうとだな、これは私の体の中の魔力をはじき出してるんだ。

生き物や物は少なからず魔力を持ってる。 空気中にもな。
魔法使いは体の中に貯めている魔力や、空気中、物質に宿る魔力を使って魔法を使うんだ。

よく漫画とかで、どかーんって何かにぶつかった時に星がでる表現があるだろ?
あれ本当に出てるんだぜ?魔力。

生物が身体の中に溜め込んである魔力ってのは生きてる限り必ず漏れてるんだ。多かれ少なかれな。
で、空気中だったり、物に宿ったり、土地に吸収されたり、そんな風に循環してるんだ。
水みたいなもんだって考えてくれてもいい。

私がレアなきのこを探して食べてるのだって、まあ好きだからってのもあるけど、
魔法の森にあるきのこは土地から吸収した魔力で育ってるものも多い。
で、その食べ物のかなにある魔力を取り込んでるわけだな。

魔力、MPを上げるのには修行も大事だが、いや、食べるのも修行ってわけだな。


そうそう忘れてた。ゆびぱっちんのことか。
そうだな今つけてみようか、あの小さなランプ。ちょうどいい。

ぱちんっ

指を弾く事で、こうして魔力をだして・・・

でもって、ほいっと

ぱぁあ…


な?簡単だろ?

パチュリー位になると指先ひとつでできるようになるんだが・・・
いや、私だってできるぜ?出来るけどつい癖でな。

それにこっちのほうが簡単だし。かっこいいだろ。

で、いまオレンジ色に光ってるあのランプ。
あれはだな、魔力を与えると光を放つ『光魔晶石』の一種で、結構いいもんだ。リッチな買い物しやがって。
他の、部屋の大きな照明とかは珍しくもない普通の光の魔晶石で出来てるんだが、
あの魔晶石はこめた魔力の質によって色が変わる珍しいタイプなんだ。

夜更かしにはもってこいなんだがなぁ・・・。
アリスはけちだ。人がせっかく頼んでるのに貸してくれない。


まあそうだな、気が向いたらまた魔晶石とか他のもんとかについて教えてやろう。



 「おっとっと暖炉暖炉も、っと」



 アリスの家の暖炉。
師匠のところの暖炉に似てる。魔界式なのだろう。小洒落た装飾が施されている。 
 師匠の友人はじめ、魔界には魔晶石やら他のもので暖をとる魔法使いも多いが、幻想郷ではわりに珍しい。

この暖炉の石畳にもだな、物の燃焼を助けてかつ長引かせる魔晶石が一応使われてるんだが・・・
あれだ、長くなるからまた今度な。

それに「都会派」って自分で言うわりには、暖炉はめんどくさい薪をくべる旧式だ。全部ちゃんと作りゃあいいのに。
前に聞いてみたが「こだわり」らしい。そうそう、図書館も薪をたくタイプだ。

いや、あそこのは館の主の趣味か。


「さーて、火っと……」

 ポケットから出した八角形の道具の一部を片手で開けて、暖炉の薪に近づけ――――

 ――――カチンッ


 一瞬で火が入る暖炉。

あーこれこれ暖かい。
元旦の朝、人一人担いでゆっくり歩いてきたから身体の芯から冷えていた。


・・・・・・こだわりか、炎の暖炉も悪くないかもな。

「う~ん……ごにょごにょ……」


 「えーっと、さーて、水水っと」
 うんうん唸ってる人形使いが気の毒だ。早くもっていってやろう。

甘い香りのするアリスの城に向かう。
いつもより少しだけ散らかってはいたが、あれだないつもが生活感がないだけか。

アリスが宴会に持ってきてたクッキーやらケーキは美味かった。酒にはあわなかったけどな!

いや魚のパイとか、まぁ鹿肉のパイは「男の子の味」で美味かったからいいか。丁度メイドの「ワイン」もあったしな。

 綺麗に磨かれてあるグラスを一つ取って蛇口に当て、捻る。
 

  きゅっ こぽこぽこぽ……


 「ったくよくもまーあんだけ呑んだなあいつ・・・」



 ――――今日の宴会を少し思い出した。



おーい来たぜー霊m・・・・
魔理沙ー!
あん?空か?やけに…
って!どあああああぶねええええええええええ!!


ドグシャーーーー!


いってててて・・・ってはえーよお前ら!

いきなり抱きつかれてバランスを失って墜落した。馬乗り。おもてぇよ。馬鹿鴉め…。

魔理沙っ!会いたかったよ!
ほらほら卵も一杯持ってきたの!食べて食べてっ!

次々口にほうりこまれたゆで卵。

ふっっふぉふひふぇふぃむぐぅうううううう!(窒息してしぬううううううう!)


少女咀嚼中……。


もぐもぐもぐもぐ・・・。
はぁはぁ…マジで死ぬかと思ったぜ…。



ごめんごめん、でも会えて良かった!うにゅ~っ!

お前に抱きつかれるとなんか身体に悪い気がするんだが……大丈夫か?おい。
一番早かったのは地底の連中だった。なんでだよ。
つか放れろ動けない。



久しぶり!魔法使いのおねぇさん!会いたかったよ!

お前はたまに神社に来てるだろ。

にゃはははっ!気にしない気にしないっ!今日は宴だからね!



あー遅いぞ白黒!もう始まってるからな宴は! ほれっお前も呑みな呑みな!あはははは!(ばしんばしん

ぶっふぉっ!いってーな!肩ぶっ壊れるだろーが!加減して叩けよ!馬鹿力なんだから!

あっはっはっはっは!悪い悪い!(ばしんばしん。

どぅふぉっ!変わってねーって!わざとやってんじゃねーだろうな!



楽しそうなことで…。……妬ましい事わ。

そんなこというために来たのかお前は・・・。とか言いつつ結構楽しんでるみたいじゃねーか。

……ッ!そっ、そんなことはないわよっ!

はいはい。妬ましい妬ましい。楽しみに来たんだろ?素直に楽しんでいけって。

なっ…なによ…もう。



やあやあ魔法使い!

おおお前も来てたのか!久しぶりだな!てか顔真っ赤だぞ。

そうだねぇもうだいぶ飲んだけど、いや呑まされたからねぇ・・・。



ようキスメ。お前もいたのか。

・・・・・・。(にこっ

楽しんでるみたいだな。よかったよかった。



お世話になっております。改めて例の異変の折にはうちの子たちがお世話になりました。

おーおー地霊殿の主までわざわざ来たのかこっちまで。
あれ?妹はどうしたんだ?

ついさっきまでは居たのですが・・・。あの子は恐らく守谷の方へいっているようですね。

やっぱりまだ手は焼いてるのか・・・。大変だな。ははは・・・。 てか「取り決め」はどうしたんだよ。



あれはあくまで口約束ですわ。お互いの「領分」を侵さないためのね。


・・・・・・。別に驚きは今更しないけど、帽子ん中に出るのはやめろ。

あらあらつれない。成長したわね、あのころよりは。

まぁな。お前も重たいから頭から早く降りろ。

あら失礼な。女性に重たいなんて言葉はデリカシーに欠けてよ。

むしろお前にあるのかよ……。そのデリカシーってやつは。

今日は年越しの宴。無礼講ですわ。

お前は年中無礼講だろ。

境界をちょちょいと。

いじってな。


あはははははははは!





朝一に来たつもりだったが地底、八雲、そしてぞろぞろと紅、永遠亭、あと小町と、
閻魔は守谷のほうに行ったらしい。

あとは寺の衆、里の衆、妖怪、妖精、魑魅魍魎。



アリスは少し遅れて昼頃に来た。
何故かはりきって用意してきたらしい料理や酒、お菓子まで大荷物を抱えて、
人形の大群と一緒に。最初に見たときは戦争かと思ったな。いったい何が始まるんです?
















 あ、私も一口飲もっと。なんだかんだで結構呑んだ。

 

  ――――ごくっ ごくっ ごくっ


 「っぱぁ! やっっぱり呑んだあとの水が一番美味いぜ!」


 毎度毎度思うが、酒ってのはこの、一杯のまさに「命の水」の為にあるんじゃねーかな。
酒気が喉を通る冷たい水とともにすっと抜けていく気がする。


うーん・・・。

って飲んでる場合じゃないな。

  きゅっ 
 







  ことっ

 「ほらっアリス。水だぞ。相当飲んでるんだから、ゆっくり飲めよ?」 
 ……無様。今までにもましてぐだぐだだ。どうしてこうなった。
 「あ、……りがとぅ……。魔理沙……」
 上手く声が出ない。というよりあんまりしゃべりたくない。魔理沙の顔がゆがんで見える。あ、グラスか。
 「ふぅ…・・・。お前なぁ……、だから言っただろ?あんまり呑むなって。
酒なんて普段あんまり飲まないくせに、あいつらに付き合うなよったく……。
まだどんちゃんやってるってのに抜ける羽目になっちまったし、飯だってちょっとしか食えてないだろ?」

 そうだ、あまり食べ物を食べた記憶がない。早起きしていろいろ用意していったのに、
……あれ、食べた記憶というよりほとんど思い出せない。

 雪、鬼の顔、山のような樽酒と料理、角……。
鬼のことしか思い出せてないじゃないの。まだ頭の中がぐるぐるしている。
 

とりあえず、お水……。

 ごくっごくっ……ふぅ……


 魔理沙の金色の目には心配そうな色が浮かんで見えた
私が水を飲む手を支えてくれている。

もう帰るって私が騒ぎ出したことを思い出した。あー恥ずかしい……。
なによ。いつもいつも私に頼みごとばっかりするくせに、するくせに、こんな時だけ。

 「すこしは落ち着いt・・・」
 「私は別に、頼んでないわよ! 早く、じ、神社でも戻ったら?
 私のせいでご飯食べ損なったんでしょ? 私でゆっくりしてたいの。もう大丈夫だから……放して」

 水を飲む私とグラスに手を添えてくれていた魔理沙の手を払う。

 なによ、もう、子ども扱いして……。とりあえずソファーでいいから横になりたい。

 ぽさっ

 ・・・・・・少しは落ち着いた・・・かも。


 「・・・あーそうかい、そーかい。けどお前も災難だな、
あはは。あの二人に絡まれたら逃げられないもんなー。ここに二日酔いに効く薬、置いておくぜ。ちゃんと飲めよ?」

 棚の上、人の家の薬箱。泥棒。何で知ってるのよ。


あーもう。怒る元気も出ない。



 「……?」

 胸元が暖かい。

やわらかいオレンジ色の光を纏う魔晶石。
魔理沙の魔力を感じる。部屋も心なしか暖かくなってきた気がする。

 ……なによ。やけに今日は――――



 うーん……やっぱり機嫌悪いな……。今日はとりあえず―――

 「じゃまっお暇しますか、元旦から邪険にされるんじゃ幸先悪いしな」

 「……ふんっ、邪険にしたって来るくせに」

  こういうところはほんと可愛くねーなもう……。
 なんてーか、……私は母親か。まったく、親の顔が見てみたいぜ。
 もっと熱くしてきゃあよかったか。なんてな。


  けどまあ――――  


 「邪険にされても尋ねる家がある限りは何度だって来れるぜ。私よりも心の広い家主も居るしな」
 「それとちゃんとベッドで寝るんだぞー」


  ――――やさしいじゃない。


 「そんなところで寝たらぜったい風邪引くからな。あ、そうだ。寝室も温かくしておくか、勝手に入るぞー」

 もういつの間にか傍にいない。
薄目を開けてみるともう部屋ドアあけてるじゃないの。
本人が目の前にいるのに勝手に寝室に入るんじゃないわよ。堂々としすぎでしょこれ……。


まあいいわ。私の、グラス一杯のお礼。 

 「……魔理沙」

 身体を起こす、じんわりと手に触れた石があたたかい。
 
「あーん?」

 気の抜けた返事をしながら振り向く魔理沙。

 「……朝ごはんくらい、食べていきなさいよ。今から神社に戻るのも面倒でしょ? 料理の残りもあるし」


  ――――可愛いところがないわけでもないか。
 

 「……ああ、そうさせてもらうぜ。言っとくけど今日の私は七がつくものじゃないと食べないからな」

 実はアリスの持ってきてたものは、ちょっとずつだが全部口にしていた。
ま、けどほかの御節だ何だを目の前にお預け食らったんだ、好きなものねだってもいいよな。
 

「……まだ早いんじゃないの?」



 「いや、






ここにあるぜ――――






   

  かしゃん―――― 


 魔晶石が落ちた。




                                 九つ色の魔女の宵明け おわり
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