11月の秘封倶楽部


11月某日、某大学図書館。






カチッ、カチッ・・・






がたっ


あーあ、暇ねー。やることねー。


そうねぇ、学園祭の展示もあんまり人が来なかったしね。


む、それは見る目のないやつらが多いだけよ!
せっっっかく私たちが現地に赴いてまで調査してきた珠玉の調査結果を展示してあげたのに!


まぁまぁ蓮子、仕方ないわよ。
私たちのやってることって普通の人たちからみたらわかりにくいものだもの。



「秘封倶楽部」

秘封倶楽部とは、ここで木枯らしに葉を落としていく木々をぼんやりと眺めながて
今年の学園祭の盛り上がりについてぼやいている「宇佐見蓮子」と、
それをなだめるようにしながら本とレポートとを交互に見つめている
「マエリベリーハーン」通称メリーの二人からなる良くあるただのオカルトサークルである。

オカルトサークルではあるが、良くある除霊や降霊などそういった類の霊や魔術的なものを研究するサークルではない。

そのため周りからはまともな活動をした事のない不良サークル、と周りからは思われているのであった。


そのため、珍しくやる気になった蓮子にのせられ、わりとまじめに
今までの活動記録、という名の「旅行記」を今回の学園祭に展示をしてみたはいいのだが・・・
「不良サークル」というレッテルのせいなのか、二人の、いや、蓮子の日ごろの行いが悪い?せいなのかあまり人は来なかったらしい。


あまり活動していないと周りからは思われてるが…実はこの二人は、もっといかがわしい?目的を持って活動をしているのだった。


「境界を暴く」


その志を元にこの二人はあっちへ行ったりこっちへいったり
日本各地を食べ歩記・・・もとい、「調査」して回っているのだった。



え?何のために?

それは二人に聞かないと、では私はしばしお暇。








ふう、今日も蓮子はぶーぶー言って、あんまりぶーぶーいってるとぶたさんになるわよー。


なによー、ぶーぶー


口答えもする元気もないわけね、ぶーた蓮子。


うるさいわねー・・・羊さん。


やるわね。


やるな。ぐぬぬ・・・


ああそうそう、こないださぁ言ってたじゃない、夢の話。


え?ああ、あれね、夢の話だし。それに夢なんて人間毎日見るじゃない。
あれはたまたま印象に残ってただけだし・・・。


いやそうじゃなくて、「結界を見る力」に変化はないの?


ああそのことね、別に変わりはないとは思うんだけど、最近・・・・。


最近・・・?




・・・スーパーの魚の鮮度がなんとなくわかるわね。あと牛乳とか卵とか。




ガクッ!なによそれ!どういうことなの!?って言うかそれただの主婦の感じゃねーか!


あはは!違うのよ蓮子、そういうことじゃなくて、なんとなくだけど・・・
一線を越えてるのか越えていないのかが見えるというか・・・。


ふーん・・・賞味期限を見分ける程度の能力・・・。ずいぶんかわいく便利になったわねメリー。


人を便利な道具みたいな目でみないでよ・・・。


・・・・・・カタン。さて、もうこんな時間かー。


ぱたんっ。うん、こっちもまとめ終わったし、帰ろうか?蓮子?


そうねー。


蓮子もまとめたら?あの教授早めに提出しないとほとんど読まないらしいよ?で単位も適当だって。


ふーん。どうでもいいかなー。私の素晴らしい論文をせっかくお目にかけてやってるのに
目を通さないおろかな教授の単位なんていらないわー。


・・・めんどくさいだけでしょ。蓮子。


あ、わかった?


・・・パタン。さて、じゃあ行きましょ?帰りにあそこに寄ってこ?


そうねー














11月某日午後7時 宇佐見蓮子 自宅


カチャリ・・・。


がちゃっ



たーだいまー。


だーれもいないのよー ぼすっ、がさっ


季節は11月、この時間になるとさすがに寒い。このまま寝てしまおうかとも思ったけど、ちょっとまって。

てきとーにコンビニとかスーパーとかで買い物してきたプリンが袋から転がってでてた。

今日はクリームの乗ったプリンを買ってきた。あれは絶対うまい。私の感に狂いはないはずだ。


適当にベッドに寝そべってもそもそしていると鼻にマフラーがかかった。

・・・・・・冬の香りがする。
ああ、なんかノスタルジック。結構好きなにおい。
冬の冷たい風と町の香り。晩御飯のいいにおい。



今日もいろいろあった。



別になんともないいつもと同じ講義、自分の講義がないときは入り浸ってるわりと蔵書の充実した図書館。

今日はメリーが遅かった。適当に課題をさばいて新聞を斜め読み、前に読んでいた論文の続き、読み終えて小説、漫画。




飽きた。




うーん、お風呂にでもはいろーかなー 

上がったらデザートー

でも恋しいベッド。あ、コタツも出さなきゃ。メリーが来たら手伝わせよう。明日くらいに。


さ、て、と。


ほいほいほい、っと脱いで、洗濯機にぽいっ。

おふろおふろー



ふむ、下着姿だとさすがに寒いか。やっぱり着てよ、まだ。寒い。


この間買った冬物の部屋着・・・。あったかー!なにこれ!素肌にこれは気持ち良い。

なんか幸せ・・・。

買ってよかった、ありがとメリー。


けどメリーのピンクチョイスはなかったな。灰色買ってよかった。うん。


・・・・・・。


やっぱり先にプリン食べよう。乙女は本能に忠実なのであった。









宇佐見蓮子の自宅は大学に程近いところにある古くもなく新しくもなく、ごくごく平凡な二階建てのアパートの二階の部屋だ。
大学に合格して少し後、東京に住む母と一緒に部屋を探してるときに一目惚れしたらしい。

彼女いわく「ただ単に見晴らしが良いから」らしい。
部屋を決めるにはそれだけで十分だった。あと、この周辺の雰囲気が私の想像力をかきたてるとも言っていたっけ。


大学からほど近い、私は良く蓮子を朝、迎えに行ったりする。たいてい散らかってる。汚い、わけではないが雑然としている。
本棚に机、ご飯を食べるためにしかないテーブル。わりと趣味が良いカーテン。
あ、これは私が見繕ったのね。ついこの間まで蓮子の趣味の悪いカーテンのせいで昼でも暗かったし。うん。可愛いと思う。


せっかく模様替えしたのにあんまり生活自体は変わっていないようだった。

話を続けるけど、食べたままの食器とかお菓子の袋、容器、朝起きたら捨ててるらしいけど、私が蓮子の部屋に行くと大抵残ってる。
あとは、開いたまま置かれていたりする本本本本本・・・・。おおよそ乙女要素は皆無だった。


しいて言うなら乙女の香り?だけはする。たぶん。蓮子のにおい。


雑然としているとは言ったけど、私は蓮子の部屋が好きだ。
なんというか・・・・・・落ち着く。




むしろ彼女は私の部屋に来ることが多い。

彼女いわく「メリーの部屋の方が綺麗だから」らしい。だったら自分の部屋も片付ければ良いのに・・・。

私の部屋ではよく二人でいろいろな文献を調べたり、調査の計画、という名の旅行計画を練ったりしている。


彼女の趣味で私の本棚に漫画が増えた。日本の漫画は面白い。
とくにこないだ読んだ漫画は主人公が霊能力者になって悪い妖怪を退治したりするものだった。

あんなふうに悪い妖怪です、って出てくることって現実にあるのかしら?

実際に妖怪や妖精なんて見たことがないけど、見えたら良いな、とちょっと思う。
私に見えるのは「結界」やその「境界」、あとは私の冷蔵庫の中で食べたらお腹を壊しそうなものくらいかな。

あんまりメルヘンじゃない。いや、良いんだけれど。

もっとそういう力だったらいいのに、と思ったことがないといえば嘘になる。

けど、私は・・・・・・。


ううん。なんでもない。


それにしてもあの夢を見て以来、何かが起こるような気がしてならない。


なにかが。


気にしても仕方ないか。


何かが起こっても。私には蓮子がいるもの。



きっと大丈夫。私たちは「秘封倶楽部」だもの。




私の能力が少し変化してきているのは実感してる。
けど、特に困ったことではないし、むしろちょっと便利な気もする。
「境界」を越えているものに、見えるものと見えないものの差はあるけど。


取り敢えずあの牛乳は捨てておこう。きっともう駄目だ。私の目が正しければ。


                                    マエリベリー・ハーン


ぱたんっ。

さて、私もお風呂にでも入ろうかな。


ぱさっ・・・。パチン。   ぱさっ


とてとてとて・・・ ガチャッ・・・


キュ・・・ サァアアアア・・・




今頃・・・・蓮子、何してるのかな・・・?











サァアアア・・・・・ キュッ。


ガチャ、ふいーさっぱりしたー


風呂上りはやっぱりこれよね~ ぎゅ う にゅうっと!


っぱぁはーーー!うまい!やっぱりこれよね!



・・・・・・メリーより・・・いやうるせーよ。ちくしょうめ。




ぼふんっ



ぱらり。


メリーの能力。

「結界を見る程度の能力」

結界。結界(けっかい、Skt:Siimaabandha)とは、聖なる領域と俗なる領域を分け、秩序を維持するために区域を限ること。
本来は仏教用語であるが、古神道や神道における神社なども、同様の概念があることから、
言葉として用いられているが、大和語としては端境やたんに境ともいう。


境界(きょうかい、きょうがい、けいかい)とは、事物や領域などを分ける境目のこと。
分野や用法により様々な用例がある。



その境界を見る力。

私の親友はその普通は目には見えない「結界」を見ることが、いや、見えてしまう能力を持っている。



何でそんなオカルトチックな力を?
そんなこと私に聞かないでよ、わかるわけないでしょ?

とにかくその力を使って私たちは「境界を暴く」為に色々活動していたの。

何で「境界を暴く」なんてことをしてるかって?

それは前に言ったでしょう?まあ私がその気になったらまた教えてあげるわよ。



で、本題。




私が変化してきてるんじゃないかと感じていて、いや、彼女から今さっき聞いた話で確信に変わったわ。


彼女の能力は「変化」してきている。


改めて「結界」を見る力から「境界」を見る力に。

聞いたでしょ?


賞味期限が何となくだかわかる。


ここから推察するに、メリーの力は確実に変化している。

今までになかった変化だ。


ある日、あの夢の話をして以来――――



「夢を見たの、ねぇ蓮子。」



そう、あの日以来。


詳しく彼女にその「目」のことを聞くと、何となくだが
ある一線を「越えている」か「越えていないのか」が見えるらしい。


結界を見る力から境界を見る程度の能力。
果ては、操る程度の能力へ。

私は今でもその力へと近づいているんじゃないかと考えているわ。
きっと、近い将来彼女はそうなる。なってしまう。たぶん。

これはあくまで私のメリーの観察、考察、そして私たち秘封倶楽部の大切な活動日記。


観察ってのは趣味が悪い?


それはお互い様よね?


「あなたも」ここを読んでいるんだもの、ねぇ?


まあいいわ。今日の日記はここでおしまい。


続きは明日。実践派オカルトサークル「秘封倶楽部」の活動はまだまだ続くのよ。


取り敢えず言える事は、今度から私のうちに来たとき冷蔵庫の中身チェックしてもらいたいかな。

寒くなってきたとはいえ生ものは危ない。

そういえばこの間読んだ漫画の主人公も似たようなことしてたなぁ。

便利便利。あーこれでしばらくお腹壊す心配がなくなったのね。


ん?私が適当に買い物するのが悪い?余計なお世話よ!

食べたいと思った時に食べれないと気持ち悪いでしょ!

乙女のお腹は本能に忠実なの!


っていらないことを書き過ぎたわね。この辺で終わりにしましょう。

                              
                                宇佐見蓮子





はー、なんか今日はまた少し考えることができたわね。


むー


ちょっと早いけど眠ろうかな?


しかしほんとこの服、ふふっ。気持ち良い・・・。


ありがと、メリー。







































翌日 夕方 大学図書館――――――――






幻想郷?





なに、また夢の話?


ううん、これを見て蓮子。

えー何々・・・?



「長野県某所にある博麗神社、こちらとあちらを分ける境界の要あり。」

「境界をまたぐには年の瀬、年明けの境、要の上に立つこと。」

「現に飽いたもの、忘れ去られたもののたちの流れ着く場所、幻想の郷あり。」



・・・・・どこでこれを?メリー。


図書館の閲覧制限のかかってる書架にあったらしいわ。こっそり持ってきたの。

あんた・・・結構大胆なのね・・・。

誰かの影響かもね?

何よ。私?私が何時大胆だった・・・・・・わね。
・・・たしかに。


あ、自覚してたの?

大胆不敵な行動力が必要なときもあるのよ!調査研究には!
実践派オカルトサークル秘封倶楽部なんだから!

そうね、おかげさまで何か面白そうなものの手がかりがつかめたんだから。

でも、どうして大学の書架にこんなものが?

さぁ・・・?それはわからないけど・・・。

というからしいってどうやってこんなもの手に入れたの?


今日の朝、蓮子が来る前に蔵書の移動があって・・・・・・、そのとき丁度そこにいたのよ。





朝 大学図書館――――― 









教授ーこっちに移動で良いんですかー?

おおそっちだ。

大学の閲覧制限の本っていっても別に面白そうなのないですねー

何を言うか、民間に伝わる伝承をまとめたものもそうだが貴重な書物ばかりなんだぞ。

へーそうなんすかー

特にこのもう一つの世界が「境界」の向こう側にある、という話はなかなか興味深いものだぞ?

ふーん・・・ ばさっ

けど教授ー・・・どさっ。あとどれくらいあるんですかー?結構移動したと思うんですけど・・・


んー。あと300くらいか?昼前に終わらせるぞー。

えー!まだそんなにあるんですかー!?

まあそういうな、昼くらいはご馳走するから。

まじっすか!じゃあさっさと終わらせましょう教授!

現金なやつだな・・・。






てててて・・・・・・。

ひょこっ ぱしっ        こそこそ・・・






で、こっそりと拝借したの。


・・・・・・あんたねぇ・・・。

・・・ほんと大胆になったわね・・・。


ふふっ、誰かさんのせいでね。



あはは!・・・までも。今年の冬休みの予定は決まったわね!


え?




行くわよメリー!幻想郷に!








十一月の秘封倶楽部  おわり
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